『死に至る病』「教化および覚醒のための、キリスト教的・心理学的講話」
1849年にAnti-Climacusという偽名で出版されたセーレン・キェルケゴールの哲学書
「この病は死に至らず」という新約聖書ヨハネによる福音書第11章4節の言葉を紹介する所から話が始まる。
人間的に言えば、死は全ての終わりであるが、キリスト教的に言えば死は終わりではなく、永遠の生命にしてみれば全体の極一部でしかない。すべての事象はキリスト教にとって死に至るものではないというのだ。故に病も死には至らず、死でさえ死に至らない。
しからば、「死に至る病」とは絶望の事であり、本書に於いてキェルケゴールは絶望には三種類あって、それらについて更に細かく分析している。絶望の反対は希望。
1)絶望の内にあって自己を持っているという事を意識していない場合(非本来的絶望)
2)絶望して自己自身であろうと欲しない場合
3)絶望して自己自身であろうと欲する場合
「人間は精神である。精神とは何であるのか。精神とは自己である。自己とは何であるか。自己とは自己自身に関わる一つの関係である。」
◆キェルケゴール
1813~1855。宗教思想家・哲学者。デンマークのコペンハーゲンに生まれる。大学では神学を学び、やがて文学や哲学に傾倒する。婚約破棄の体験が起因となり、実存・主体・自己を探求した多くの著作を遺す