ダブルコンティンジェンシー

double contingency

銃を持った見知らぬ相手と向きあいながら、「銃を捨てろ。そうすれば、オレも銃を捨ててやる。」と叫んだ場合、たがいが相手が銃を捨てるかどうかに依存してしまう状況が生まれる。このように、ある選択(意思決定)において、この問題と関わりあう相互が、たがいに相手の選択結果に依存してしまうような不確定性な状態がダブルコンティンジェンシーである。

この場合、相手が銃を捨てようと、保持しようと、いずれの場合にも自分の側は銃を保持した方がメリットがあると踏んでしまい、2人とも武器を捨てようとしない状況が生まれる。

相手(他のプレーヤー)がどのような選択(戦略)を取ったとしても、自分の利得の最小値を最大にしようとする推理(最適化に向けた戦略)が働いてしまうことになるが、これはゲーム理論の世界で「囚人のジレンマ」と呼ばれる問題である。また、双方のプレーヤーが戦略を変更する誘因を持たず、たがいに非協力的に均衡してしまう状態のことを「ナッシュ均衡」と呼んでいる(数学者ジョン・フォーブス・ナッシュによって考案)。冷戦時代にアメリカとソ連がたがいに核兵器で覇を競い合っていたとき、双方とも削減しようとしない状況(最善の策がとられとしたとしてもナッシュ均衡にしか到達できない状況)が生まれ、ジレンマに陥っていた。これが囚人のジレンマのパラドックスである。

産業社会やウェブ世界(Web2.0)でも、規制と規制緩和、所有と非所有、有料と無料(戦略)、オープンとクローズ、実名と匿名など社会システムに特有な不確定性に囲まれた状況にある。ウェブ世界では、個人によって処理できる情報量が一定の閾値を越え、本来の働きを阻害する(情報として活用し難くなる)という状況が頻繁に起きるが、これは、識別・選択が可能な状況にありながら、その行為を行うための推理が働かなくなるという意味で一種のダブル・コンティンジェンシーの状態である。

これらの不確定性を縮減するための方策の1つが「信頼」、「信用」であり、「多様性を包むメタコミュニケーション」である。たとえば、社会システム論のルーマンは、「信頼」という概念を手がかりに、社会コミュニケーションにおけるコンティンジェントな状況の対称性を破る仕掛けを展開し、ウェブ世界(Web2.0)の解釈にも多くのヒントを与えている。

Webより引用

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