社会保障給付費が100兆円突破

厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所は29日、2010年度に年金や医療、介護などで支払われた社会保障給付費が前年度比3.6%増の103兆4879億円と過去最高を記録し、初めて100兆円を突破したと発表した。

高齢化の進展で、年金受給者数や医療費が伸びているのが要因。

1人当たりの社会保障給付費も同3.6%増の80万8100円と過去最高となった。

年金の削減や消費税増税による社会保障給付金負担は増加させる予定だが、一人あたりの社会保障給付費も増えているのはなぜだろうか。

全国健康保険協会(協会けんぽ)は財政収支の悪化から保険料率が10%にのぼり、中小企業の従業員に過重な負担を強いている。大手企業の健康保険組合(健保組合)の財政状況も厳しい。

高齢化に伴い、高齢者医療を現役世代がより支えることになり、協会けんぽ、健保組合とも収入のうち4割程度が高齢者医療への拠出金となっている。両健康保険の財政が悪化した背景には、労働者の収入減少と反比例して1人当たりの医療費が増加していることもあるが、高齢者医療拠出金が重く圧し掛かっている。

ところが、高齢者の医療は「メタボ化」が止まらない。70歳以上の高齢者の年間受診回数は40回ほどにのぼり、後期高齢者(75歳以上)への医療支出は国民全体の3分の1を占める。

先進各国は家庭医制度を設けるなど、医療費圧縮に取り組んできたが、我が国は先送りを続けてきた。在宅死亡率が10%強と低く、大半の日本人は病院で人生を終えるが、こうした国は珍しい。スウェーデンは半分の人が自宅で最期を迎える。

一方で、人口の高齢化は加速し、国の財政は破綻寸前だ。2060年の人口予測によると、15歳から64歳の生産年齢人口と65歳以上の人口がほぼ同じになる。現役世代1人が65歳以上の1人を支える「肩車社会」になる。消費税率を10%に引き上げても解決にはならない。

健康保険制度に国の支援強化が必要なことは言うまでもない。それに加え、高齢者医療を改革しないと、現役世代の負担増になるだけでなく、高齢者医療も存続できなくなる。思い切った対策を打つ必要に迫られている。

協会けんぽの保険料率は今年度まで3年連続で引き上げられ10%になり、これ以上の引き上げは難しいだろう。健保組合は組合によって差があるが、平均で8・3%になる。協会けんぽと比べると、負担率は低いが、財政収支が年々悪化している。一方、公務員の共済組合の保険料率は7・7%と民間サラリーマンと比べて恵まれている。同じ給料なら、公務員は民間サラリーマンより支払う保険料が月額で数千円安い。こうした格差も見直し、健康保険制度の再設計も必要だ。


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