『遠い町から来た話』 ショーン・タン
【作者】
・ショーン・タン
1974年オーストラリア生まれ。これまでにオーストラリア児童図書賞他数々の賞を受賞。作品は世界中で翻訳出版されている。代表作『アライバル』のほかに『遠い町から来た話』『レッドツリー』が邦訳されている。
・岸本 佐知子
1960年生まれ。翻訳家。主な訳書にM・ジュライ『いちばんここに似合う人』、L・デイヴィス『ほとんど記憶のない女』。編訳書に『居心地の悪い部屋』他。著書に『気になる部分』、『ねにもつタイプ』がある。
○町はずれの空き地に住む巨大な水牛に相談ごとをすると、どっちの方角に行けばいいのかを黙って指し示してくれた
○どこからともなくやってきた留学生のエリックは台所の棚にすんでぶっきらぼうだけど、この国の事に興味をもっていた
○枯れ枝に土くれをのっけた棒人間たちは、子供がからかっても踏みつけて粉々にしても、いつも無抵抗に突っ立っている
○地図の端っこみたいに町は突然ぷつんと切れているのか、僕と兄さんは探検旅行に出かけることにした――。
・・・
本作は15の物語から成る短編集。絵本としては文章が長い作品が多く一見大人向けとも見える。しかし子供というのは不思議にも、完全に理解できないものにも魅かれ、楽しむ力がある。15編の謎めいたショートストーリーと丹念に描かれたイラストで、読む者は日常に紛れ込んだ小さな異界に引き込まれる。描かれる絵は懐かしいようで、殺伐としたイメージを含みなんとも言えず魅了されるばかり。
幼児向けの絵本とは一味も二味も違った読後感が味わえる。
きっと多くの子供が魅せられ、何度も何度も繰り返し読みたがる、読んでもらいたがる。そして読む側の大人の鑑賞に耐えうる魅力も兼ね備えているので、何度読んでも大人側の解釈と子供の理解が無数に組み合わせられる場がうまれるのだ。
「エリック」という作品に登場する交換留学生「エリック」の造形がとても可愛らしく、人間側視点のシンプルな文章もいい。文章と合間のページに挟まれる絵がうまい調子を読み手に与えてくれる。そしてラストシーン、突然帰国したエリックが留学先の家庭に残していった感謝のしるし、これには子供も感動して手を止めるだろう。アニメや映画でないこの本固有の店舗がまた魅力的だ。
【作者】
・ショーン・タン
1974年オーストラリア生まれ。これまでにオーストラリア児童図書賞他数々の賞を受賞。作品は世界中で翻訳出版されている。代表作『アライバル』のほかに『遠い町から来た話』『レッドツリー』が邦訳されている。
・岸本 佐知子
1960年生まれ。翻訳家。主な訳書にM・ジュライ『いちばんここに似合う人』、L・デイヴィス『ほとんど記憶のない女』。編訳書に『居心地の悪い部屋』他。著書に『気になる部分』、『ねにもつタイプ』がある。
○町はずれの空き地に住む巨大な水牛に相談ごとをすると、どっちの方角に行けばいいのかを黙って指し示してくれた
○どこからともなくやってきた留学生のエリックは台所の棚にすんでぶっきらぼうだけど、この国の事に興味をもっていた
○枯れ枝に土くれをのっけた棒人間たちは、子供がからかっても踏みつけて粉々にしても、いつも無抵抗に突っ立っている
○地図の端っこみたいに町は突然ぷつんと切れているのか、僕と兄さんは探検旅行に出かけることにした――。
・・・
本作は15の物語から成る短編集。絵本としては文章が長い作品が多く一見大人向けとも見える。しかし子供というのは不思議にも、完全に理解できないものにも魅かれ、楽しむ力がある。15編の謎めいたショートストーリーと丹念に描かれたイラストで、読む者は日常に紛れ込んだ小さな異界に引き込まれる。描かれる絵は懐かしいようで、殺伐としたイメージを含みなんとも言えず魅了されるばかり。
幼児向けの絵本とは一味も二味も違った読後感が味わえる。
きっと多くの子供が魅せられ、何度も何度も繰り返し読みたがる、読んでもらいたがる。そして読む側の大人の鑑賞に耐えうる魅力も兼ね備えているので、何度読んでも大人側の解釈と子供の理解が無数に組み合わせられる場がうまれるのだ。
「エリック」という作品に登場する交換留学生「エリック」の造形がとても可愛らしく、人間側視点のシンプルな文章もいい。文章と合間のページに挟まれる絵がうまい調子を読み手に与えてくれる。そしてラストシーン、突然帰国したエリックが留学先の家庭に残していった感謝のしるし、これには子供も感動して手を止めるだろう。アニメや映画でないこの本固有の店舗がまた魅力的だ。
コメント