『キャズム』 ジェフリー・ムーア


『キャズム』 ジェフリー・ムーア/川又政治 翔泳社

【著者】
ジェフリー・A・ムーア
 米国ビジネス界を代表するコンサルタントのひとり。
 キャズムグループ代表。
 ハイテク大手企業などをコンサルティングするTCG Advisors社の創設者兼経営パートナー。
 シリコンバレーの有名なベンチャー企業であるMohr、Davidow Venture社の出資パートナーでもある。
 代表的著書『キャズム』(翔泳社)は、1991年の初版刊行時からハイテク関連企業のバイブル的存在となり、スタンフォード大学ほか、多くの一流ビジネススクールにて課題図書となっている 
 『キャズム』
『トルネード経営』
『ゴリラゲーム』
『エスケープ・ベロシティ』
『ライフサイクル イノベーション』

【内容】
・「キャズム理論
・ハイテク企業のために書かれたマーケティングの書。マーケティング戦略を記載。
・テクノロジーのライフサイクルとその各段階でターゲットとすべき顧客を、標準偏差を用いて明確に定義。
・製品の浸透過程を定義。
1.新たなテクノロジーが最初「イノベーター」(テクノロジーオタク)に受け入れられ、
  2.やがて他者に先んじて投資しようとする「アーリー・アドプター」(別名ビジョナリー)によって支持され、
  3.そして実利主義者であり、成功の鍵を握る「アーリーマジョリティー」
  4.保守的な「レイト・マジョリティー」に採用されていくという
  5.新しい技術を嫌い、最後まで取り入れない層として「ラガード」
・問題は、ライフサイクルの図において、各層の間に存在する溝がキャズム
 ハイテク製品のマーケティングでは、自分たちがライフサイクルのどこに位置するのかを正確に認識し、首尾よく溝を越えていくことが成否を分ける。
 「アーリー・アドプター」と「アーリー・マジョリティー」の間の大きな溝(キャズム)を乗り越えられるかが、その製品が普及するか、一部の新製品マニアに支持されるに留まるかの一番の鍵
・キャズムを抜け出す方法
  ターゲットカスタマーを決定
   各ターゲットへのシナリオを評価。市場規模。バイヤーと販売チャンネルの接点。購入の必然性。
  ホールプロダクトを構築
   実際に使うにあたって必要な機能と製品の機能は別もの。
  競争相手との対比
   マジョリティーは比較原則で動く。
  販売チャンネルの選定
   投資量とスピードが鍵。初期とその後で変える。
・Apple、Palm、SGI、HP、IBMなどの事例で解説。
・マーケターは「信頼できる情報がほとんどない状況下」で自社製品がどこに位置するのかを認識し、「これまででもっとも難しい決断を下さなければならない」。

【その他】
 「普及学」の基礎理論として知られるエベレット・M・ロジャーズ(Everett M. Rogers)のモデルでは、顧客は
 「イノベーター」「アーリーアダプター」「アーリーマジョリティ」「レイトマジョリティ」「ラガード」の5つの採用者タイプに区分される。
 この理論ではイノベーターとアーリーアダプターを合わせた層に普及した段階(普及率16%超)で、新技術や新流行は急激に拡がっていくとしている。
 そこで、イノベーターとアーリーアダプターにアピールすることが新製品普及のポイントであるとされてきた。

 これに対してムーアは、利用者の行動様式に変化を強いるハイテク製品においては、5つの採用者区分の間にクラック(断絶)があると主張した。
 その中でも特にアーリーアダプターとアーリーマジョリティの間には「深く大きな溝」があるとし、これをキャズムと呼んだ。
 ハイテク市場のアーリーアダプター(ムーアはその中心的人物をビジョナリーと呼ぶ)が製品を購入しようとするのは「変革の手段」としてであり、競合他社に先んじて新技術を採用することで差別化することを狙いとしている。彼らは競争優位を得るために自身でリスクを引き受ける覚悟で新技術を導入するが、ベンダに対して過大な要求を突きつける場合もある。
一方、アーリーマジョリティ(実利主義者)は「生産性を改善する手段」として製品を位置付けている。未熟な技術によって自身が試行錯誤を行うことになる事態を回避し、同業他社などの使いこなしの事例を参考にしたがる。しかし、導入した製品や技術を社内標準に指定する場合が多いため、ベンダにとっては高い利益率が見込めるため、重要な顧客である。
すなわち、キャズム理論ではアーリーアダプターとアーリーマジョリティでは要求が異なっており、キャズムを超えてメインストリーム市場に移行するためには自社製品の普及段階に応じて、マーケティングアプローチを変えていくことが必要だと説いている。

キャズムのイメージ


○参照
 @IT情報マネジメント




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