9月日銀短観

◆業況DIが悪化
 企業の景況感を示す業況判断指数の9月調査では、大企業・製造業の業況DIが前回比▲3 ポイントになった。

◆自動車の業況
 これは、主に世界経済の鈍化を受けたもので、これまで5 四半期連続で改善を続けてきた自動車、電気機械が悪化すると見込まれるからである。
 特に、自動車の国内乗用車販売は、エコカー補助金の下支えが 9月中の終了を前に 8 月から弱まっているほか、輸出台数もこれまで頼みの綱だった北米向け輸出が 8 月の貿易統計では鈍化しており、内外需要の減退は深刻にみえる
 一方、非製造業は、今次局面では製造業よりも「良い」超の水準を上回ってきた。大企業非製造業のDIはプラス8と横ばい。東日本大震災からの復興需要を背景に建設などが改善したものの、夏のボーナスの減少や天候不順による衣料品などの販売不振で、小売りが前回比5ポイント悪化した。こちらは、通信やサービスの好調に押し上げられてきた要因が大きい。悪化要因としては、前述のエコカー補助金のほか、家電販売の不振や他の財消費の伸び悩みが挙げられる。

◆企業収益に及ぶ変化
 企業の期待収益を押し下げる背景には、世界経済に対する見方がある。特に、米国経済は雇用拡大が思わしくなく、これからクリスマス商戦を控え、その先には「財政の崖」のリスクが待ち構えている。世界経済の先行きに対しては、ギリシャ危機が一旦は遠のいた 6 月後半頃に比べて、現在はより趨勢が減衰する見通しになっている。
 為替レートはこれまでの想定レートに対して、現在まで78円台前半(9月20日時点)といくらか円高水準で推移している。9月19日には日銀が追加緩和で円高是正を試みたが、なかなか成果が上がらない。企業に対して、円高水準がしばらくは継続するという慎重な見方をさせるだろう。あとは、原油価格もコスト高になりそうだ。米欧での金融緩和がその副作用として資源価格高騰を引き起こすだろう。
 一方、短観の世界では設備投資計画は強め。例えば、2012 年度の製造業の投資計画は、6 月調査でも2 桁の設備投資増を見込んでいる。9 月調査も同じく2 桁を維持するだろう。短観では経常利益計画の前年比がプラスになっていて、企業が同じように設備投資計画を収益計画と重ねて考えてくるという事情があるからだ。

◆日銀の金融政策との関係 
 日銀は 9 月の金融経済月報で、景気判断を下方修正をしていて、今後とも世界経済の減速が強まるとみている。今後の金融政策に影響を与えるとすれば、短観の売上・経常利益計画が予想以上に悪かった場合。また、実際の為替レートが、9 月調査の想定為替レートに対して円高水準になることも、日銀はさらなる緩和を検討する材料になると考えられる。

Web記事より

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