芸術と技術 ARTの語源は何か?
「芸術」という言葉は、art(アート)の訳語として明治時代に生まれた。 「芸術」に関する英語の格言に Art is long, life is short. がある。一般に「芸術は長し、人生は短し」と訳される。これはギリシアの医学者ヒポクラテスの言葉とされる。
そのラテン語訳は Ars longa, vita brevis. その英訳が
Art is long, life is short.
brevisは「短い」という意味のラテン語。
英語のartはラテン語のars(アルス)に対応し、日本語では「芸術」と訳される。 しかし、ラテン語のarsはギリシア語のテクネーに相当し、本来は「芸術」というより、自然に対置される人間の「技」や「技術」を意味する言葉であった。たとえば、artの形容詞形artificialは、「わざとらしい」とか「人工的な」という意味をもつが、その反意語は「自然な」という意味を持つnaturalである。つまり、artの派生語には、natureの反意語としての意味、すなわち「人工」や「わざ」といったニュアンスを今も確認できる。技術はテクネーに近い。 元々ヒポクラテスの言葉は「芸術」でなく「医術」について語ったのであり、その趣旨は「人生は短いが、医術を修得するのに要する年月は果てしなく長い」というものであった。 artは基本的には「芸術」を意味し、語源であるラテン語のアルス(ars)の基本義とぴったり対応しない。
一方で、artを用いた表現として「リベラル・アーツ(the liberal arts)」という言葉もある。大学の「教養課程」がその訳語。アートの語源であるラテン語のアルスには「学問」という意味もあり、リベラルには「自由人にふさわしい」という意味が込められていた。つまり、「立派な市民となるにふさわしい学問の基礎」というのがリベラル・アーツの本来の意味である。
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